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モフトレ通信 -Vol.007-

2020.08.25

できることから始めてみましょう!”科学的介護”の実現に向けた政策動向

 

 2018年度介護報酬改定での通所介護・地域密着型通所介護におけるADL維持等加算の創設、通所・訪問リハビリテーションの質の評価データ収集システム「VISIT」の稼働、さらに科学的介護データベース「CHASE」も今年度中の運用を目指すなど、”科学的介護”の実現に向けて様々な施策が実施されています。

 

 また、2020年7月14日には厚生労働省の「要介護者等に対するリハビリテーションサービス提供体制に関する検討会」の報告書が公表されました*1。同検討会では、第8期介護保険事業計画の策定に向けて、都道府県や保険者が現状把握・目標設定の参考にできるような、リハビリテーションのサービス提供に関する指標等が検討されました。

 

 現時点では、訪問リハビリテーション・通所リハビリテーション・介護老人保健施設・介護医療院によるサービスが対象となっていますが、今後は通所介護等、他のサービスも検討対象になることが考えられます。

 

 具体的な指標の例は以下の通りです。ストラクチャー指標(施設や事業所の物的資源、人的資源、地域の状態像等)、プロセス指標(事業所の活動、事業所や施設間の連携体制等)は示されたものの、アウトカム指標は現時点で明確に示すことが難しいため、今後の課題として「考え方と例示」が挙げられています。

 

<各指標の例(一部)>

ストラクチャー指標

 

・地域のサービス提供事業所数
・定員数
・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の従事者数 など

 

プロセス指標

 

・利用率
・定員あたりの利用延人員数
・通所リハビリテーション(短時間(1時間以上2時間未満))の算定者数 など

 

アウトカム指標
※考え方と例示のみ

・考え方
 →生活期リハビリテーションは活動・参加の拡大を目指すこと
 →地域共生
 →本人の尊厳 など

 

・例示
 →主観的幸福感、健康観
 →社会参加への移行
 →ADL(BI1,FIM2)の変化度 など

出所:厚生労働省「要介護者等に対するリハビリテーションサービス提供体制に関する検討会報告書」をもとに三菱総合研究所が作成

 

 前述の通り、これら指標は都道府県や保険者が第8期介護保険事業計画の策定する際の参考として示されていますが、計画の策定・実行においては、地域の事業所も積極的な関与が求められるでしょう。

 

 また今後、VISIT・CHASEの一体的な稼働が始まり、”科学的介護”の実現に向けた取り組みが一層進み、アウトカム評価に重点が置かれることが予想されます。

 

 近隣の施設・事業所との差別化、そして地域の重症化予防・自立支援等に貢献するためにも、まずはご自身の施設・事業所で出来るところから指標となるデータの記録・分析などを徐々に進めてみてはいかがでしょうか。

 

(*1)  厚生労働省「要介護者等に対するリハビリテーションサービス提供体制に関する検討会」      

 

                          以上

 

          (文/(株) 三菱総合研究所 ヘルスケア・ウェルネス事業本部 研究員 斉藤 卓也)