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モフトレ通信

モフトレ通信 -Vol.006-

2020.08.12

介護現場にPDCAを!~生産性向上ガイドラインのご紹介~

 

 今年の4月、厚生労働省ホームページ*1において、「生産性向上に資するガイドライン 改訂版」が公表されました。

 

 このガイドラインは、来たる人口減少社会において今より介護人材が不足する中で、これまでと同じ介護の質を確保していくために、介護現場のサービス提供のあり方を見直すためのノウハウが盛り込まれています。

 

 ガイドラインは大きく、「介護サービスにおける生産性向上の捉え方」「業務改善のための具体的手法」「業務改善の取組事例」で構成され、施設サービス、居宅サービス、医療系サービスといった介護サービスのほぼ全類型をカバーしています。特に「業務改善の取組事例」は実際に各施設・事業所において一定期間業務改善を行った結果が掲載されています。

(出所)厚生労働省ホームページ 「介護サービスの質の向上に向けた業務改善の手引き 改訂版」 https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000198094_00013.html (最終閲覧日:2020年8月3日)

 

 具体的な業務改善のプロセスは上図の通りですが、厚生労働省ホームページにおいては、多くの施設・事業所がつまずく「現状分析」を負担なく行う支援のため、「介護分野における生産性向上支援ツール一式」*2も公開されています。これらにより、自分たちが日々どのような業務にどのくらい時間をかけていて、どこが非効率かを見える化することが可能になります。

 

 では実際、業務改善の取り組みとはどのように進められるのでしょうか。事例を1つご紹介します。

 

通所リハビリテーションでの業務改善の取組事例
 この事業所はフロア面積が広く、入浴・送迎時の職員間のコミュニケーションが非効率という課題を抱えていました。そこでワーキング・チームでの検討を経て、インカムを導入することでこれらの業務の効率化を狙いました。導入後は送迎車の到着に合わせてタイミングよくフロアの職員を呼び出して対応することで、送迎車到着までの時間を有効活用することができ、その結果、利用者の見守りに充てる時間が増加しました。間接業務を効率化することで直接業務の時間を増やすことができた一例です。

(出所)厚生労働省ホームページ 「介護サービスの質の向上に向けた業務改善の手引き 改訂版」 https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000198094_00013.html (最終閲覧日:2020年8月3日)

 

お二人にお話しを伺い、課題は散見されたものの、「色々な都合で自宅から出られない方や、対面でのコミュニケーションが苦手な方など、この取り組みが誰かの役に立てば良いと思っています(矢村さん)」という言葉が印象的で、ここにツールとしてのオンラインの価値があるように感じました。

 

介護現場での生産性向上のあり方
 一般に生産性は単位投入量(Input)あたりの成果(Output)として捉えられますが、介護は対人サービスです。闇雲に効率化に走るのではなく、「Input」→「Output」の間にある「Process」の改善に努めることが必要です。

 

 業務改善は継続的に行うことで組織にその仕組みが根付くため、それなりに時間を要します。ただし、一度仕組みを構築することで、今回のコロナ対策のような非常事態においても有効に機能すると言えます。まずはガイドラインを片手にスモールスタートをし、徐々に組織内で理解を求め、業務改善を始めてみませんか。

 

 

*1 厚生労働省ホームページ 「介護分野における生産性向上について 1ガイドライン」

*2 厚生労働省ホームページ 「介護分野における生産性向上について 2介護分野における生産性向上支援ツール一式」

      

                           以上

文/(株)三菱総合研究所ヘルスケア・ウェルネス事業本部 主任研究員 川邊 万希子