モフトレ通信 -Vol.010-
2020.10.06
本格化目前! 高齢者の自宅トレーニング
株式会社Moff(以下「Moff」)が神戸市で行った自宅トレーニングの実証実験(*1)の結果が出た。まだ中間報告であるが、高齢者が行う自宅トレーニングの可能性を示唆している。
参加した約100人の高齢者の殆どが、ICTを活用し、週2回、いきいき百歳体操を基本とする運動メニューを自主的に実施した。いきいき百歳体操を楽しく実施する専用アプリをMoffが開発し、運動の実施履歴を自動管理したり、これらの結果を遠隔で助言するトレーナと共有する仕組みを活用した。自らの運動記録を確認できることや、トレーナの励ましが運動継続を促したのである。加えて、この実証ではテレビ会議の仕組みを使い、トレーナと他の高齢者が一緒に楽しく運動するイベントを取り入れたことも、運動継続を後押ししたようである。
コロナによる行動規制は緩和されているが、多くの介護施設などでは、まだ厳格な感染症対策を継続している。そうしたなか、6月に実施された緊急アンケート(*2)で示唆された高齢者のフレイル低下がさらに進行していないかが懸念される所だ。自宅トレーニングによるフレイル悪化防止への期待は高い。
さて、ウィズコロナ下のデジタルシフトは日本全体で急速に進みそうである。前述したアンケートによると、介護事業者の2割がコロナ対応としてデジタル活用に取り組もうとしているという。このデジタル活用の中身は、3密を避けるテレビ会議やSNSが中心である。しかし、ご紹介した自宅トレーニングの実証結果を思い起こすと、デジタル活用による自宅トレーニングなどのサービスも、この秋から冬にかけて拡大していくことが予想される。
こうした新たなデジタル活用は、コロナ影響で稼働が低迷する訪問系のサービスと通所系のサービスの境界を少しずつ低くしたり、これまで算定する事業者が少なかった生活機能向上連携加算の拡大、といった業界構造を変える動きを加速する可能性が高い。介護サービス提供者は、介護報酬改定の行方と合わせ、こうした事業環境の変化に対してアンテナを高くしておくことが重要だ。
(*2) 新型コロナウイルス感染症が介護・高齢者支援に及ぼす影響と現場での取組み・工夫に関する緊急調査【介護保険サービス事業所調査】調査結果報告書(2020年6月9日)
以上
(文/(株)三菱総合研究所イノベーション・サービス開発本部 主席研究員 飯村 次郎)
過去に配信した記事はこちらです
-Vol.001-「コロナ撲滅!職員・利用者が団結して立ち向かうデイサービス奮闘記」
-Vol.002-「ピンチをチャンスに!高まる訪問看護需要への応答」
-Vol.003-「コロナで忍び寄る身体リスクを跳ね返す自宅トレーニング」
-Vol.005-「コロナ渦における新たな取り組み! “オンライン認知症カフェ”」
-Vol.006-「介護現場にPDCAを!~生産性向上ガイドラインのご紹介~」